フォルダの自動振り分けの手順|組む前に決めておく5つのこと
フォルダの自動振り分けを調べる人の多くは、すでに一度どこかで組んだことがあります。ダウンロードフォルダに溜まった書類を種類ごとに動かす仕組みを作り、数日は動いて、そのうち見なくなった。この記事は道具の使い方の前に、組む前に決めておく5点を順番に並べます。この5点が空欄のまま作った仕組みは、ほぼ同じ場所で止まります。
振り分けが続かないのは、仕組みではなく決め事が足りないから
ファイルを自動で動かす手段そのものは、macOSの中に何段階も用意されています。デスクトップに保存したものを種類ごとにまとめるスタック、フォルダに何かが入ったときに動くフォルダアクション、条件を組み立てて実行するショートカット、時刻で起動する仕組み、それに外部のアプリ。手段は足りています。
止まる場所はいつも同じです。作った本人が、しばらく経ってから「このファイルはどこへ行ったのか」を追えなくなる。自動で動いた結果を信用できなくなると、人は保存先を手で選び直すようになり、仕組みは残ったまま使われなくなります。1か月放置したあとに中身を見て、自分が置いた覚えのないフォルダが増えていれば、その状態です。
原因は、ルールを書く前に決めておくことを飛ばしているからです。何をきっかけに動かすのか。何を見て分けるのか。どこへ置くのか。同じ名前がぶつかったらどうするのか。間違えたときにどうやって戻すのか。この5つは、どの道具を使っても同じように問われます。道具を選ぶのは、この5つが埋まったあとです。
決めること1:引き金をどこに置くか
自動振り分けの引き金は3種類しかありません。ファイルが置かれた瞬間に動かすか、決まった時刻にまとめて動かすか、自分が押したときだけ動かすか。
置かれた瞬間に動かす方式は、フォルダアクションやフォルダの監視機能が該当します。手をかけずに片づく反面、保存の途中のファイルをつかむ事故が起きます。ブラウザのダウンロードは一時ファイルを作ってから本体に書き換える流れで進むため、書き終わる前に動かすと壊れたファイルが行き先に残ります。この方式を選ぶなら、拡張子が .download や .crdownload のものを対象から外す条件を先に入れます。
決まった時刻にまとめて動かす方式は、事故が起きにくい代わりに、動くまでの間ダウンロードフォルダが散らかったままになります。仕事の区切りに合わせて1日1回にすると、散らかりを見る時間が短くなり、動いた結果をまとめて確認できます。
自分が押したときだけ動かす方式は、いちばん地味ですが最初はこれが向きます。押した直後に結果を見られるので、ルールの間違いをその場で直せます。運用が固まってから、時刻起動か保存時起動に格上げする順番が安全です。
決めること2:何を見て分けるか
判定の材料は、拡張子、名前の一部、Finderのタグ、日付、それにダウンロード元の情報に分かれます。どれを主に使うかで、あとから直す手間が変わります。
拡張子は安定していますが、分類としては粗いままです。PDFという1種類の中に、請求書も契約書も取扱説明書も入ります。名前の一部で分ける方式は細かく効く反面、名前の付け方が崩れた瞬間に効かなくなります。取引先から届く書類の名前は、こちらでは決められません。
タグは、名前にも場所にも縛られない材料です。Appleのユーザガイドは、タグが保存場所に依存しない点を次のように書いています。
ファイルおよびフォルダにタグ付けして、簡単に探せるようにすることができます。タグは、ファイルやフォルダがMacに保存されているかiCloudに保持されているかにかかわらず、すべてのファイルやフォルダで機能します。 出典: support.apple.com
材料は2つまでに絞ると管理が楽になります。拡張子で大きく分け、名前かタグで細かく分ける。この組み合わせなら、片方が効かなくなってももう片方が残ります。3つ以上の材料を組み合わせた条件は、半年後に読み返したときに自分でも判断できなくなります。
決めること3:行き先の形を決める
行き先の作り方には、年月で切る方式、案件で切る方式、種類で切る方式の3つがあります。混ぜると破綻します。
年月で切る方式は、あとから探す手がかりが日付しかないものに向きます。領収書、スクリーンショット、受け取った資料。案件で切る方式は、複数の種類のファイルが同じ仕事にぶら下がるものに向きます。種類で切る方式は、ファイル単体で完結するものに向きます。
深さは2段までに止めます。年のフォルダの下に月、その下に種類、さらに案件、と積み上げた構造は、振り分ける側のルールも、探す側の手順も同時に長くなります。3段目からは、フォルダではなくタグか検索条件で代用できないかを先に考えます。
もう1つ、条件のどれにも当てはまらなかったファイルの置き場を1つ作ります。ここが無いと、判定から漏れたファイルは元の場所に残り続け、ダウンロードフォルダが片づかない理由が「まだルールが足りないから」だと分かりません。この受け皿を週に一度見る習慣がつくと、追加すべきルールが自分から見えてきます。
デスクトップに限れば、行き先を作らずに見た目だけをまとめる方法もあります。
Macのデスクトップのスタックは、デスクトップ上のファイルをグループに整理します。ファイルをデスクトップに保存すると、ファイルは自動的に適切なスタックに追加されます。 出典: support.apple.com
ファイルの実体は動かないため、あとから場所が分からなくなる事故は起きません。デスクトップだけが問題なら、振り分けを組む前にこちらで足りることもあります。
決めること4:同じ名前が来たときの動き
見落とされやすいのがここです。行き先にすでに同じ名前のファイルがある場合、どう動くかは道具によって違います。
Finderを経由する移動なら、置き換えるか、両方残すかを聞かれます。ターミナルの mv は何も聞かずに上書きし、上書きされた側はゴミ箱にも残りません。自動化の中で mv を使うと、この上書きが人の目に触れないまま進みます。mv -n を指定すると既存のファイルがあるときに何もしない動きになるため、自動で動かす仕組みの中ではこちらが既定になります。
決め方は3つです。上書きする、連番を付けて両方残す、行き先に同名があるものだけ受け皿に逃がす。実務で困りにくいのは3番目です。上書きは事故が静かに進み、連番は同じ中身のファイルが2つ並ぶ結果を招きます。受け皿に逃がしておけば、あとから中身を見て決められます。
銀行やクラウドサービスから落ちてくる明細は、月が違っても同じ名前で届くことがあります。この形のファイルを扱うなら、行き先に移す前に日付を名前に足す処理を1つ挟むと、以降の衝突がまとめて消えます。足す日付は、ファイルが作られた日ではなく中身が指している月にすると、あとから並べたときの順序が実態と合います。
同じ名前でも中身が同じとは限らない点にも注意が要ります。衝突したときに中身まで見て判断する仕組みを作り込むより、大きさと更新日時が両方一致したものだけ片方を捨て、それ以外は受け皿へ送る形のほうが、条件が短く済みます。中身の照合が要る場面は、振り分けとは別の作業として切り離します。
決めること5:取り消せる形にしてから自動にする
自動で動く仕組みの怖さは、間違いが静かに大量に適用される点にあります。手で動かしたときの間違いは目の前で起きますが、自動の間違いは気づくまでに時間が空きます。
先に用意しておくものは2つです。1つは動いた記録です。いつ、どのファイルを、どこからどこへ移したかを1行ずつテキストに書き出しておけば、間違いに気づいた時点で戻す手がかりになります。もう1つは試走です。実際には動かさず、動かす予定の一覧だけを出す動作を最初に走らせます。ターミナルで組むなら echo を挟んで一覧を眺め、ショートカットで組むなら移動の動作をいったん通知に差し替えます。
いきなり rm を含む処理を自動化の中に置かないことも決め事の1つです。不要なものを消す動作は、振り分けが安定してから別の仕組みとして足します。振り分けと削除を同じ仕組みに同居させると、判定を1か所間違えたときの被害が戻せない側に振れます。
手順:1フォルダ・3ルール・1週間
決め事が埋まったら、組む順番は次のとおりです。
- 対象のフォルダを1つに絞る。ダウンロードフォルダから始めるのが分かりやすい
- ルールを3本だけ書く。件数の多い順に3つで、残りは受け皿へ
- 手動で押す形で1週間回す。押すたびに結果を見て、受け皿に落ちたものを数える
- 受け皿が減らなければルールを1本足す。減っていれば引き金を時刻起動に切り替える
- 安定してから、次のフォルダへ同じ手順を移す
最初から10本のルールを書くと、どのルールが効いていてどれが無駄なのかが分かりません。3本で始めて、受け皿の中身を根拠に増やしていく進め方なら、増えたルールの1本ずつに理由が残ります。
権限と同期でつまずく場所
組んだのに動かないとき、原因はルールではなく許可の側にあることがよくあります。デスクトップ、書類、ダウンロードの3つのフォルダは保護されていて、自動化の仕組みがそこへ触るには許可が要ります。システム設定のプライバシーとセキュリティにあるフルディスクアクセスと、ほかのアプリを操作する許可の欄を見て、使っている仕組みの名前が並んでいるかを確かめます。ここが空欄のとき、多くの道具はエラーを出さずに何もしません。
クラウド同期も止まる場所です。iCloud Driveでストレージの最適化が働いていると、しばらく開いていないファイルは実体がMacから消えて目次だけが残ります。この状態のファイルを自動で動かそうとすると、先にダウンロードが走り、件数が多いと途中で止まります。同期している場所を対象にするなら、実体がそろっているかを確かめる手順を前に置きます。
外付けドライブを行き先にする場合は、接続されていないときの動きも決めておきます。行き先が見当たらないときに黙って作り直す仕組みだと、本来の場所とは別の空フォルダにファイルが積み上がります。行き先の存在を先に確かめて、無ければ何もせず記録だけ残す形にしておけば、次につないだときにまとめて処理できます。
もう1つ、共有フォルダを対象にするときは自分の権限を確かめます。閲覧のみで招待されている場所は、移動も名前の変更も受け付けません。手で操作したときは画面に理由が出ますが、自動で動かした場合は静かに失敗したまま記録にも残らないことがあります。共有された場所を扱う仕組みには、失敗したファイルを数える処理を入れておきます。
窓を行き来する手数から、もう一度考える
ここまでの5点を決める作業は、実際には窓を何度も行き来しながら進みます。フォルダの中身を見て件数を数え、ターミナルで試走の一覧を出し、条件の書き方をAIに尋ね、また一覧に戻る。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある配置なら、この往復が同じ作業ディレクトリの上で続きます。試走の結果を見ながら条件を直す動作は、一覧とコマンドが離れているほど重くなります。
この置き方で何ができるのかはできることにまとまっています。2画面型やターミナル常駐型など、別の課題を解いている道具との違いは他のファイル管理との比較で並べて確認できます。費用の考え方は料金に、細かい疑問はよくある質問に整理してあります。外出先で結果だけ確かめたい場合の続け方はiPhone・iPadから続きをにあります。
いま決めるべき1つを選ぶなら、受け皿のフォルダを作ることです。判定から漏れたファイルが1か所に集まる状態を先に作れば、次に書くべきルールは自分で名乗り出てきます。
よくある質問
フォルダの自動振り分けは、保存した瞬間に動かすべきですか?
最初は自分で押したときだけ動く形にするのが向きます。押した直後に結果を見られるので、条件の間違いをその場で直せます。保存の瞬間に動かす方式は、ダウンロードの途中のファイルをつかむ事故が起きるため、対象から一時ファイルを外す条件を入れてから切り替えます。
ルールは何本くらいから始めればよいですか?
件数の多い順に3本で始めて、条件に当てはまらなかったファイルは受け皿のフォルダに集めます。1週間ほど回して受け皿の中身を見れば、次に足すべきルールが分かります。最初から10本書くと、どれが効いているのか判断できなくなります。
同じ名前のファイルが行き先にあったらどうなりますか?
道具によって動きが違います。Finderを経由する移動は置き換えるか両方残すかを聞いてきますが、ターミナルの mv は何も聞かずに上書きし、上書きされた側はゴミ箱にも残りません。自動化の中では、同名のものだけ受け皿へ逃がす形が安全です。
組んだのに何も動かないときは、どこを見ればよいですか?
システム設定のプライバシーとセキュリティにある、フルディスクアクセスとほかのアプリを操作する許可の欄です。デスクトップ・書類・ダウンロードの3つは保護されていて、許可が無いと多くの道具はエラーを出さずに何もしません。次に疑うのは、iCloudで実体が手元に無いファイルです。