ダウンロードフォルダの整理とは|何ができて、どこで詰まるか
ダウンロードフォルダの整理を調べると、返ってくる答えは大きく2つに割れます。片方は「拡張子ごとにフォルダを作って自動で振り分ける」、もう片方は「どうせ使わないのだから全部消す」。どちらも整理と呼ばれていますが、指している作業は別物です。片方はファイルの置き場所を変える話で、もう片方は件数を減らす話です。ここを分けないまま仕組みを組むと、振り分け先のフォルダが第2のダウンロードフォルダになって終わります。この記事では、整理と呼ばれている作業を4つに分解し、それぞれ何ができて、どの条件で手が止まるのかを並べます。
整理と呼ばれている作業は、実は4つに分かれている
同じ「整理」という言葉で呼ばれていても、変わるものと元に戻せるかどうかが違います。
| 作業 | 何が変わるか | 元に戻せるか | 効く場面 |
|---|---|---|---|
| 探せるようにする | 見つけ方だけ。ファイルは動かない | 影響が無いので戻す必要が無い | 場所は分からないが特徴は言える |
| 移す | 置き場所と、フォルダを開いたときの件数 | 移動先が分かれば戻せる | 開くのが遅い、目で追えない |
| 減らす | 容量と件数 | ゴミ箱を経由すれば一定期間は戻せる | 空き容量が足りない |
| 名前を揃える | 一覧に出る文字列 | 元の名前を控えていなければ戻せない | 名前から中身が分からない |
自分がいま困っているのがどれなのかを先に決めると、要らない工程が落ちます。たとえば「先週落としたPDFがどれか分からない」は探せるようにするの問題で、ファイルを1件も動かさずに解けます。「フォルダを開くと固まる」は件数の問題なので、移すか減らすかしかありません。「空きが足りない」は減らす以外に効く手がありません。
混乱が起きやすいのは、移すと減らすを同じ仕組みに入れてしまったときです。自動で移す設定は失敗しても移動先を見れば取り返せますが、自動で消す設定は取り返せません。この2つを同じルールの中で走らせると、事故が起きたときに原因を切り分けられなくなります。
ファイルを動かさずに探せるようにする
いちばん影響が小さいのが、探し方を増やす方向です。macOSには検索条件そのものを保存する仕組みがあり、条件に合うファイルを1か所に並べて見せます。
指定した基準に基づいて、共通点のあるファイルをまとめて便利なリストを保持するには、スマートフォルダを使用します。 出典: support.apple.com
ここで大事なのは、保存されるのは条件であってファイルではないという点です。スマートフォルダの中身を削除すれば元のファイルが消えますし、スマートフォルダを消してもファイルは残ります。見え方だけを足している状態なので、いま動いている作業を壊しません。
同じことはシェルからも書けます。索引に問い合わせる形なので、フォルダを走査するより速く返ります。
mdfind -onlyin ~/Downloads 'kMDItemContentTypeTree == "com.adobe.pdf"'
同じ方向の手として、ファイルにタグを付ける形もあります。こちらも置き場所を変えずに分類を足せるうえ、1つのファイルに複数のタグを付けられるので、フォルダのように1か所しか選べない制約がありません。ただしタグは付ける人が付けないと増えないため、自動で付ける仕組みを別に用意しない限り、受け取ったファイルには何も付きません。ダウンロードフォルダのように自分で作っていないファイルが流れ込む場所では、タグは後から追いつかないことが多くなります。
この方向でできないことも、はっきりしています。件数は1件も減りません。重複も残ります。フォルダを開いたときの待ち時間も変わりません。「探す時間」は短くなりますが、「フォルダを開いて眺める時間」は短くなりません。検索で足りるのか、置き場所を変える必要があるのかは、この2つのどちらに時間を取られているかで決まります。数十件なら検索で足り、数千件なら置き場所を変える側の話になります。
自動で振り分けるとは、合図と条件と行き先を先に決めること
自動の振り分けは、3つの部品でできています。いつ判定するかという合図、どれを選ぶかという条件、何をするかという動作です。どれか1つでも決まっていないと動きません。
合図には2つの型があります。フォルダに変化があった瞬間に動く型と、決まった時刻に動く型です。macOSに最初から入っている道具だけで言えば、フォルダアクションが前者、launchdの定期実行が後者にあたります。Automatorとショートカットは、その中で走らせる動作を作るための道具です。Appleの案内では、繰り返しの作業をMacに任せるための仕組みとしてAutomatorユーザガイドが公開されています。
条件に使える手がかりは、思っているより多くあります。
- 拡張子と、それより正確な種別(Finderが持っているUTI)
- 追加日。そのフォルダにいつ現れたかで、変更日とは別に記録されている
- 取得元のURL。ブラウザ経由で来たファイルには記録が残る
- ファイルサイズ
- 名前の型。スクリーンショットのように決まった形で付く名前
行き先は、最初は1つか2つで足ります。分類を細かくするほど、条件を書く手間と、後から探す手間の両方が増えます。振り分け先が10個あると、探すときに10個のうちどれに入ったかを思い出す作業が発生します。これはダウンロードフォルダを1つ眺める作業と、手間としてはあまり変わりません。
合図の選び方で最初に引っかかるのが、変化した瞬間に動く型の副作用です。ブラウザがファイルを書き終える前にフォルダの変化は発生するため、そのまま動作を走らせると書き込み途中のファイルを掴みます。これを避けるには、動作の側で一定時間が経ったファイルだけを対象にするか、書き込み途中に付く拡張子を条件から除きます。合図を時刻の側にしておくと、この問題はそもそも起きません。ダウンロードフォルダのように書き込みが頻繁に起きる場所では、即時に反応させる必要があるかどうかを先に考えておくと、後から直す工程が減ります。
拡張子で分ける形が、途中で破綻する理由
自動振り分けの説明としていちばんよく見るのが、拡張子ごとにフォルダを作る形です。始めるのは簡単ですが、続けると詰まります。理由は単純で、拡張子はファイルの形式を表しているだけで、用途を表していないからです。
PDFフォルダには、請求書も、家電の説明書も、イベントのチケットも、論文も入ります。PNGフォルダには、スクリーンショットも、資料に貼る図も、送られてきた写真も入ります。zipに至っては、中身を開くまで何なのか分かりません。3か月も経てば、PDFフォルダはダウンロードフォルダと同じ状態になります。置き場所が変わっただけで、目で追えない件数のまま残ります。
破綻を避けるには、条件を用途に近い手がかりへ寄せることになります。取得元のURLで分ければ、同じPDFでも経理のサイトから来たものと、メーカーのサポートページから来たものを分けられます。名前の型で分ければ、スクリーンショットだけを別の受け皿へ流せます。追加日で分ければ、中身を見ずに古いものだけを動かせます。どれも拡張子より書くのが面倒ですが、後から探す手間が減るのはこちらです。
もう1つ、拡張子で分ける形には見落としやすい副作用があります。同じ案件の資料が形式ごとにバラバラの場所へ散ることです。提案書のPDF、素材のPNG、元データのCSVが3つのフォルダに分かれ、案件単位で取り出せなくなります。仕事の単位がファイル形式と一致していないなら、形式で分ける設計は最初から合っていません。
実際に詰まるのは、判断ではなく「戻せない一手」
自動化が止まる理由として語られがちなのは「分類の基準を決められないから」ですが、現場で止まる理由はもっと具体的です。動かしてはいけないものを動かしてしまう一手が混ざることです。
- ダウンロードの途中にある一時ファイル。ブラウザは完了するまで別の拡張子を付けて書き込んでいて、その間に移動すると壊れる
- エイリアスやシンボリックリンクの参照先。移した瞬間に切れる
- マウント中のディスクイメージ。接続したまま移そうとすると失敗する
- 他のアプリが参照しているファイル。編集ソフトの素材や、開発の依存物はパスを覚えているので、動かすと読み込みで止まる
そして、いちばん多い止まり方がこれです。1回だけ、まだ必要だったファイルを持っていかれる。その1回で仕組みへの信用が無くなり、設定を切って手作業に戻ります。自動振り分けが続かない原因は取りこぼしではなく、この信用の切れ方にあります。
対策は仕組みの側ではなく、手順の側にあります。最初のうちは削除を含めない。移動先は日付の付いた1つのフォルダにまとめて、どこへ行ったか迷わないようにする。動かす前に、対象になるファイルの一覧だけを出して目で確かめる。この3つを守ると、事故が起きても1回の移動を戻すだけで済みます。
道具の側で詰まる場所は、権限と常駐
もう1つ、記事にあまり書かれないのに実際には引っかかる場所があります。仕組みを動かし続けるための条件です。
フォルダの変化を見張る形は、見張る側が常に動いていることが前提です。ログイン時に起動する設定が要りますし、Macがスリープしている間の変化は取りこぼします。逆に、決まった時刻に走る形は常駐が要らない代わりに、その時刻にMacが起きていなければ走りません。ノート型を閉じて持ち歩く使い方だと、この差がそのまま実行漏れになります。
もう1つは権限です。ホームフォルダの外や、他のアプリが管理している場所を触る仕組みは、macOSのプライバシー設定で許可を求められます。許可を出していない状態だとエラーも出さずに何も起きないことがあり、「設定したのに動かない」の原因の多くがここにあります。ダウンロードフォルダの中だけで完結する範囲なら引っかかりにくいので、最初は移動先もホームの下に置くのが素直です。
なお、macOSはダウンロードフォルダを期限で片付けません。システム設定にはゴミ箱を30日で自動的に空にする設定がありますが、これはゴミ箱に入れたあとの話で、ダウンロードフォルダ自体には効きません。放っておいて減る仕組みは用意されていない、という前提から始める必要があります。
整理の手が止まる、もう1つの場所
ここまでの4つの作業には、共通する形があります。フォルダを見て何かを決める。決めた内容を条件として書く。書いたものを走らせる。結果をフォルダで確かめる。この往復が、整理という作業の実体です。
そして多くの環境では、この往復が窓をまたぎます。一覧を見るのはファインダ、条件を書いて走らせるのはターミナル、条件の文面を考えるのはAIの画面。3つの窓がそれぞれ別のフォルダを開いていて、切り替えるたびに現在地を合わせ直すことになります。判断そのものより、この合わせ直しに時間が溶けます。
足りないのは道具の数ではなく、同じ現在地を共有した状態です。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にあるファイル管理アプリなら、一覧で見ているフォルダとコマンドを打つ場所が同じ場所を指すので、条件を試して結果を見るまでが窓を替えずに終わります。どこまでを1つの窓で扱えるのかはできることに一覧があります。ファインダと別のターミナルを並べる形や、常駐型の道具との違いは他のファイル管理との比較で整理されています。外出先で続きを見たい場合の扱いはiPhone・iPadから続きをにまとまっています。
いま自分がどれに詰まっているのかが決まっていれば、次に触る場所は自動的に決まります。探し方の問題なら検索条件を保存する。件数の問題なら追加日で古いものを1つのフォルダへ移す。容量の問題なら、移す前に大きいものから見る。分類の設計を考えるのは、その次で構いません。
よくある質問
ダウンロードフォルダの整理は、消すのと移すのどちらから始めるべき?
移すほうからです。移動は移動先を見れば取り返せますが、削除はゴミ箱を空にすると戻せません。追加日の古いものを日付入りのフォルダへまとめて移し、しばらく困らなかったものだけを後から削除の対象にすると、判断に時間をかけずに件数を減らせます。
拡張子ごとの自動振り分けは設定しないほうがよい?
形式と用途が一致する場合は有効です。スクリーンショットや音声メモのように、形式がそのまま用途を表すものは分けやすい対象です。一方でPDFやzipは中身が多岐にわたるため、拡張子だけを条件にすると振り分け先が元のフォルダと同じ状態になりやすくなります。
自動で整理する設定にしたのに動きません。何を確認すればよい?
確認する順番は、合図、権限、常駐の3つです。時刻で走る形ならその時刻にMacが起きていたか、変化を見張る形なら見張る側が起動しているか。次にプライバシー設定でフォルダへのアクセスが許可されているか。許可が無いとエラーを出さずに何もしないことがあります。
整理の前に、いま何が入っているかを手早く知る方法は?
ファインダで表示オプションから追加日を出して並べ替えると、到着順が分かります。容量の内訳を知りたい場合は、シェルで大きいファイルから並べると数秒で出ます。どちらも中身を1件ずつ開く必要がないので、整理の前に全体像をつかむ用途に向いています。