Hazelの代わりを探す前に|手放せる仕事と残る仕事

Hazelの代わりになるものを探し始めるとき、多くの場合は「この機能が足りない」という不満から入るのではありません。規則が増えすぎて自分でも把握できなくなったか、macOSを上げた直後に動かなくなったか、支払いの区切りが来たか。きっかけは機能の外側にあります。そのため機能の一覧を並べた比較記事を読んでも判断が進みません。ここでは、1つのアプリが同時に引き受けている仕事を分けて数え、どれが標準機能へ渡せて、どれが渡せないのかを整理します。

代わりを探すきっかけは、機能の不足ではなく規則の保守にある

自動でファイルを振り分ける道具は、入れた直後がいちばん扱いやすく、時間が経つほど重くなります。理由ははっきりしていて、規則が資産ではなく負債の性質を持つからです。1つの規則は1つの前提に依存します。請求書のPDFに会社名が入っている、ダウンロードした動画の拡張子が決まっている、スクリーンショットの名前の形が変わらない。前提のどれかが崩れた日に、規則は静かに外れます。エラーは出ません。ファイルが元の場所に残るだけです。

規則が10本を超えたあたりから、この「静かに外れた」状態を人が見つけにくくなります。動いている規則と、条件に合わなくなって空振りしている規則が混ざり、どれが仕事をしているのか分からなくなる。代わりを探す動機の多くはここにあります。つまり探しているのは別のアプリではなく、いま自分が何を自動化しているのかを見渡せる状態です。この見立てが正しいなら、乗り換え先を比べる前にやるべき作業が1つあります。ログを開いて、直近1か月に実際に発火した規則を数えることです。ヘルプメニューの「View Logs」か、ステータスメニューの「View Log」から開けます。

制限のかかった状態で足りるなら、標準機能でも足りる

判断を早く終わらせる方法があります。公式のユーザーガイドは、登録しない状態の挙動を次のように説明しています。

When you first download and install Hazel, if you do not register, Hazel runs in Evaluation mode. In Evaluation mode, all features except rule export are enabled. This mode lasts for 14 days, after which Hazel switches into Demo mode. In Demo mode, Hazel monitors only one folder and only two rules can be active. 出典: noodlesoft.com

登録しないと14日の評価期間が動き、その後は監視できるフォルダが1つ、有効にできる規則が2本だけの状態になります。この制限は乗り換えを考える人にとって、実は便利な物差しです。監視するフォルダがダウンロードだけで、規則も2本で回っているなら、自動化の規模は標準機能で組める範囲に収まっています。逆に監視フォルダが5つ以上あり、規則が数十本ある状態なら、同じ量をシェルスクリプトで書き直したときの保守は、いまより重くなります。

1つのアプリが引き受けている6つの仕事

代わりを立てる話をするには、何を代わらせるのかを先に分ける必要があります。この種のアプリが同時にやっているのは、おおよそ次の6つです。

  • フォルダを見張り、変化に反応して規則を走らせること
  • 名前・日付・種類・大きさなどの属性で条件に当てること
  • ファイルの中身を読んで条件に当てること
  • 移動・複製・改名・タグ付け・書庫化などの動作を行うこと
  • ゴミ箱を自動で掃除し、アプリを捨てたときに残る設定ファイルを探すこと
  • やってしまった処理を後から取り消すこと

6つ目は比較的新しい仕事です。Hazel 6では、Finderでファイルを右クリックしてRevertを選ぶと、元の場所と元の名前に戻り、タグやコメントの状態も戻ります。同じバージョンでは、文字情報の入っていないPDFや画像をその場で文字認識して条件に使えるようになり、パスワード付きPDFはパスワードをキーチェーンに預けて読めるようになりました。この2つは後で効いてきます。

仕事ごとに、代わりが立つものと立たないもの

6つを標準機能に当てはめると、渡せるものと渡せないものが分かれます。

引き受けている仕事 macOSの標準側の受け皿 渡したときに失うもの
フォルダの見張り フォルダアクション、launchdの監視設定 発火の記録と、当たらなかった理由の表示
属性での条件当て スマートフォルダ、findコマンド 条件と動作が1つの画面に並ぶこと
中身を読む条件当て プレビューの文字認識、手元での抽出 認識結果をそのまま条件にできること
移動や改名などの動作 Finderの一括名称変更、シェル 属性の組み合わせで自動適用されること
ゴミ箱の掃除 Finder設定の30日削除 容量を超えたときの掃除、残存設定の検出
処理の取り消し 直後のやり直し操作 時間が経ってからの復帰

表の上から4行は、手間を受け入れれば渡せます。フォルダアクションはAppleScriptを1本書けばフォルダの変化で走り、launchdの監視設定は特定のパスが変わったときにスクリプトを起動できます。改名も、拡張子と日付で振り分けるくらいの処理なら短いシェルで足ります。

渡しにくいのは下の2行です。ゴミ箱の自動削除は標準にもありますが、掃除の条件は日数だけで、容量を超えたら古い順に消すという条件は作れません。アプリを捨てたときに残る設定ファイルの検出に至っては、標準側に受け皿がありません。取り消しも同様で、手作業なら直後のやり直しで戻せますが、自動処理が走った翌日に「どこへ行ったのか」を追う手段は、記録を自分で残していない限りありません。

見張りの範囲は、思っているより狭い

代わりを検討する前に、いまの自動化がどこまで届いているのかも確かめておく価値があります。公式のユーザーガイドは、監視対象のフォルダの中にある下位フォルダについて、通常は中身の変化を見ていないと説明しています。ダウンロードフォルダを監視していても、その中のフォルダに直接ダウンロードしたPDFは条件に当たりません。下位フォルダまで届かせるには、フォルダに当たる条件と「Run rules on folder contents」という動作だけを持つ規則を別に作り、他の規則の効き方を広げる必要があります。

もう1つは同期の動作です。ガイドでは、この動作が一方向で、監視側で消したファイルは既定では相手側から消えないと明記されています。同期の専用アプリのように双方向の突き合わせや衝突の処理をする作りではない、という但し書きも付いています。この2つを知らないまま「動かない」と感じている場合、それは不具合ではなく仕様の範囲です。代わりを探す動機がここにあるなら、必要なのは別のファイル管理アプリではなく、同期の専用アプリか、下位フォルダを含めた規則の組み直しになります。

標準機能に寄せると、失敗が静かになる

代わりを立てる判断でいちばん見落とされるのが、失敗したときの見え方です。専用のアプリには、規則を編集しながら結果を先に見るプレビューと、フォルダ内のファイルがどの規則に当たるかを一覧するステータス画面と、ファイルごとの処理を追えるログがあります。公式の手引きでも、規則が動かないときは、プレビュー、ステータス画面、ログ、詳細ログの順で見るよう案内されています。

この3段の観測手段は、シェルスクリプトへ移した瞬間に消えます。cronやlaunchdで動かした処理は、成功しても失敗しても画面に何も出しません。標準エラー出力を自分でファイルへ落とし、そのファイルを定期的に読む習慣を作らない限り、処理が止まっていることに気づくのは数週間後です。書き換えの作業量より、この観測の作り直しのほうが後で効きます。代わりを検討するときは、規則の本数だけでなく「失敗に気づく仕組みを自分で持てるか」を同じ重さで見ておくほうが安全です。

手放さずに持ち続ける場合の費用と、提供の状況

乗り換えの判断材料として、いまの選択肢の状態も確かめておく価値があります。販売は開発元の直販で続いており、単体のライセンスが42ドル、同一世帯の5人まで使えるファミリーパックが65ドル、旧バージョンからの移行が20ドルです。移行の価格は単体でもファミリーパックでも同じで、ライセンスの種別はそのまま引き継がれます。

公式のFAQは、これが定額制ではないことも明記しています。購入したメジャーバージョンの範囲では更新が無料で、新しいメジャーバージョンが出た後も、買ったバージョンはそのまま使えます。2024年中に購入した人は最新版への移行が無料になる扱いも示されています。提供の状況で確かめるべき4点、つまり提供終了・新規受付の停止・運営会社の変更・料金改定のうち、現時点で該当するものはありません。開発元は2006年から続く個人の会社で、2026年9月には20年目を迎えた旨が開発元のブログに書かれています。この4点を確かめる手順そのものは、どの道具に乗り換える場合でも同じように使えます。

代わりを決める前に、ログを数える

ここまでを踏まえると、代わりを探す作業は次の順番になります。まずログを開き、直近1か月に実際に発火した規則を数える。次に、その規則が監視しているフォルダの数を数える。フォルダが1つで規則が2本以内なら、標準機能の組み合わせで置き換えられる範囲です。フォルダが複数にまたがり、中身の文字を条件にしている規則が1本でもあるなら、その1本が置き換えを止める理由になります。

数えた結果、発火していない規則が半分以上を占めていた場合、問題はアプリではなく規則の設計にあります。そのまま別のアプリへ移しても、同じ状態が再現されるだけです。この場合に効くのは乗り換えではなく、規則を減らして、残した規則の前提を書き出しておくことです。

手放した先に残るのは、窓を行き来する時間

6つの仕事を分けて、渡せるものを渡した後に残るのは、たいてい2つです。ファイルの中身を見て判断する作業と、いま見ているフォルダに対してコマンドを打つ作業です。この2つが残るのは、どちらも一覧を見ながら別の操作をする行為だからです。フォルダを見る画面、コマンドを打つ画面、条件を言葉にして考える画面が別々のアプリだと、ファイル1件ごとに窓の切り替えが挟まります。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある構成では、この切り替えが窓の中の視線移動に収まります。

一覧とコマンドが同じ画面にどう並ぶのかはできることにまとまっており、6つの仕事のうちどれがそのまま入っているのかを確かめられます。いまの道具を置き換えるのか、自動振り分けは残したまま併用するのかは他のファイル管理との比較で重なりと差を見てから決めるほうが早く終わります。支払いの形が乗り換えの理由になっている場合は、料金で無料の範囲と有料の範囲の線を先に確かめておくと、比較の軸が1つ減ります。手元を離れたときの続きの扱いはiPhone・iPadから続きをに、細かい前提はよくある質問にあります。

代わりを探しているなら、最初にやることはアプリを入れ替えることではありません。発火した規則の本数と、監視しているフォルダの数を数えることです。数が小さければ標準機能で足り、数が大きければ観測手段のある道具を持ち続けるほうが安く付きます。数える前に決めた結論は、どちらに転んでも後から覆ります。

よくある質問

登録しないまま使い続けると、規則はどうなりますか?

14日の評価期間が終わると制限のかかった状態に移り、監視できるフォルダは1つ、有効にできる規則は2本までになります。規則そのものが消えるわけではなく、上限を超えた分が動かなくなる形です。この状態で普段の作業が回るかどうかを見ておくと、標準機能へ移した場合に足りるかどうかの目安になります。

標準のフォルダアクションで同じことはできますか?

フォルダの変化に反応してスクリプトを走らせる部分はできます。渡せないのは、条件に当たらなかった理由を表示する仕組みと、処理の記録です。フォルダアクションは成功も失敗も画面に出さないため、記録を自分でファイルに落とす手当てをしないと、止まっていることに気づくのが遅れます。

別の道具へ移るとき、作った規則は持ち出せますか?

規則の書き出し機能は登録済みの状態でのみ使えます。ただし書き出したファイルは同じアプリ向けの形式なので、別の製品にそのまま読ませることはできません。実務上は、条件と動作を文章で書き出しておき、移行先で組み直す前提で考えるほうが現実的です。

料金はいくらで、定額制ですか?

定額制ではありません。単体のライセンスが42ドル、同一世帯の5人まで使えるファミリーパックが65ドルで、旧バージョンからの移行は種別を問わず20ドルです。購入したメジャーバージョンの範囲では更新が無料で、新しいメジャーバージョンが出た後も購入済みのバージョンは使い続けられます。

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