Commander Oneの使い方|無料でできることとPRO Packの境目
Commander Oneの使い方を調べ始めると、たいてい「無料の2画面ファイル管理アプリ」という4語の説明にたどり着きます。この説明は正しいのですが、足りていません。足りていない部分に時間を取られます。入手できる場所が3つあり、そのうち2つは中身が同じではなく、多くの人が無料だと思っている機能が有料側にあるからです。入れる前に10分だけ整理しておくと、後の作業が減ります。
最初につまずくのは操作ではなく、どの版を入れるか
Commander OneはElectronic Team社が出しているmacOS向けのアプリで、Swiftで書かれています。動作にはmacOS 10.13以降が必要です。
入手経路は3つあります。Mac App Store、開発元のサイト、そしてSetappです。このうちMac App Store版はAppleのサンドボックスの中で動くため、アプリの外へ手を伸ばす機能が使えません。開発元はその差を公開しています。
Commander One from the Mac App Store has several limitations comparing to the PRO version from our website. 出典: help.electronic.us
差が出るのは6つです。
| 機能 | サイト版のPRO Pack | Mac App Store版 |
|---|---|---|
| 内蔵ターミナル | 使える | 使えない |
| root権限での再起動 | 使える | 使えない |
| プロセスの終了 | 使える | 使えない |
| iOS端末のマウント | 使える | 使えない |
| ローカルドライブの取り出し | 使える | 使えない |
| F1〜F12のシステム設定を無視 | 使える | 使えない |
| クラウド、FTP、MTP、隠しファイル | 使える | 使える |
クラウドストレージ、FTPマネージャ、MTPでの端末接続、隠しファイルの表示はサンドボックスの中でも動くので、どちらの版にもあります。消えるのは、アプリの外側に触る機能だけです。開発元は、Mac App Store版を購入した人がサポートに連絡すればサイト版のPROライセンスに切り替えられる、とも案内しています。先に買ってから内蔵ターミナルが無いことに気づいた場合の逃げ道はあります。
無料のままできること
無料版は機能を削った体験版ではなく、そのまま実務で使える範囲を持っています。まずここを確かめてから、有料が必要かを判断します。
2つのパネル、3種類の表示形式、パネルごとに数の制限がないタブ。複数選択と操作キューがあり、時間のかかるコピーを流しながら次の操作を始められます。あらゆる操作にキーボードショートカットを割り当て直せます。ローカルドライブとネットワークドライブ、ネットワーク上の他のコンピュータの参照。フォントと配色の変更。Spotlight検索に加えて、正規表現が使える検索。隠しファイルの表示切り替え。バイナリ、16進、テキスト、メディア、画像、HTMLに対応するプレビュー。
書庫の扱いも無料の範囲です。ZIPは圧縮も展開も中身の参照もでき、RARは展開、TAR.GZは双方向、7-Zipにも対応します。拡張子が.ipa、.apk、.jarのファイルはフォルダとして開けるので、いったん展開する手順が要りません。Finder拡張にも対応しているため、システム側の右クリックメニューから呼び出せます。
使い始めの流れとしては、まず左右のパネルにそれぞれよく使う場所を開き、表示形式を決めます。次に隠しファイルの表示を必要に応じて切り替え、最後によく使う操作のキーを自分の手に合わせて割り当てます。ここまでを最初の30分で済ませてしまうと、以降の操作が安定します。逆にこの3つを後回しにすると、初期配置のまま使い続けることになり、2画面の利点が出る前に窓を閉じてしまいます。
この一覧のうち、位置のわりに効くものが2つあります。操作キューは、ネットワークボリュームへの遅いコピーで窓が固まらないことを意味します。もう1つの正規表現検索は、断片ではなく形で探せることを意味します。「第3四半期の請求書を全部出す」と「フォルダをスクロールして探す」の差はここに出ます。2画面で移動できて、書庫を展開せずに中を見られて、形で検索できる。この3つで足りるなら、支払いは発生しません。
PRO Packで開くもの。内蔵ターミナルはここにある
有料側はPRO Packという名前で、中身は3つの群に分かれます。
1つ目がリモートとクラウドです。暗号化に対応したFTP、SFTP、FTPSがあり、パスワードはキーチェーンに保存されます。Amazon S3、Google Drive、Dropbox(Businessを含む)、OneDrive(Businessを含む)、Box、Backblaze B2、WebDAV、OpenStack Swift。同じサービスの複数アカウントを同時につなげます。これらは同期ではなくマウントの形で扱われるため、移動のためだけにローカルへ複製が作られません。
2つ目が端末です。iOS端末のマウント、Android端末へのアクセス、MTP全般。3つ目は小さく、見落とされやすい群です。プロセスマネージャ、テーマの変更、そして内蔵ターミナルです。
内蔵ターミナルは無料ではなくPRO Pack側の機能です。ここが最も多い誤解になります。ファイル管理の窓の中でシェルのコマンドを打てることは、2画面のファイル管理アプリを開発者が使い始める理由そのものなのに、機能の紹介では有料か無料かを書かずに並べられることが多いからです。内蔵ターミナルが目当てで調べているなら、検討している対象は無料アプリではなく有料アプリです。比べるときはその前提で並べます。
スマホやカメラからファイルを取り出す
PRO Packの中で、macOSに素直な代替手段が無い群があります。端末の接続です。
macOSは接続した端末を普通のドライブとして扱いません。iPhoneはFinderの中で、フォルダの階層ではなく分類ごとの管理画面として現れます。Androidの端末はUSBでつないでも、macOSがMTPを標準では扱わないため、追加のソフトを入れないと出てきません。MTPで見えるレコーダーやカメラも同じ場所に落ちます。結果として、端末の種類ごとに別のユーティリティを入れて、窓を行き来することになります。
Commander OneはこれをPRO Packでまとめて引き受けます。片方のパネルに端末、もう片方に案件のフォルダを開けば、写真を100枚移す操作は、フォルダ間で100個のファイルを移す操作と同じになります。録音や撮影のデータを毎回取り出して整理する人にとっては、クラウド接続よりこちらのほうが効きます。長い機能一覧の中では小さな1行に見えるので、見落とされがちです。
ただし前の節の制限がここに掛かります。iOS端末のマウントは、サンドボックスで消える6つのうちの1つです。MTPとAndroidは残り、iOSは残りません。iPhoneからファイルを取り出すことが主な目的なら、この1行がどちらの版を入れるかを決めます。iPhoneやiPadとの行き来をどう設計するかという観点はiPhone・iPadから続きをにも整理してあります。
料金と、15日の試用の使い方
PRO Packは買い切りで、サブスクリプションではありません。個人向けのライセンスはMac 1台で29.99ドル、5台まで使えるチームライセンスが99.99ドルです。同じバージョン内の細かい更新は無料で、大きなバージョンアップは割引価格が用意され、将来のバージョンをまとめて含む買い方も別途あります。Setapp経由という3つ目の道もありますが、こちらは会員をやめた時点で使えなくなります。料金の考え方を他の道具と並べて見たい場合は料金にまとめてあります。
試用はPRO機能が15日開きます。決めるには十分な長さですが、機能を眺めて終わると足りません。使い方を3つに絞ります。
初日にキーボードショートカットを割り当て直します。6日目ではなく初日です。Commander Oneは全操作に割り当てられますが、初期状態は手が覚えている配置と一致しません。「使いにくかった」という感想の半分は、慣れていないだけの摩擦です。早めに直しておかないと、道具の評価と区別がつかなくなります。
次に、実際に毎日使うリモート先を1つだけつなぎます。全部つながないのがこつです。マウントの形で扱われるクラウドは同期クライアントと挙動が違い、その差は大きなファイルと不安定な回線で出ます。機能一覧を読んでも分からない部分です。
最後に数を数えます。ファイルの窓からターミナルの窓へパスを渡した回数です。この数だけで、内蔵ターミナルのためにPRO Packを買う価値があるかが決まります。
2画面で解けないことを、先に分けておく
2画面のファイル管理アプリが変えられる範囲には限りがあります。1週間ほど使うと見えてきます。
2画面が解くのは運搬の問題です。左が移動元、右が移動先。窓を並べ直す必要がなく、下の窓がスクロールしていて意図しない場所に落ちる事故も起きません。操作キューとキーボードの割り当てを足せば、ファイル作業の機械的な部分はほぼ引っかからなくなります。ここは実際に効きますし、効き目は薄れません。
そのまま残るのは、運搬の手前にある部分です。どのファイルが重要で、何という名前にすべきで、どこに置くべきか。300枚のスクリーンショットが入ったフォルダは、パネルが2つになっても整理されません。誰かが開いて、何が写っているかを認識して、名前を決める必要があります。フォルダは置き場を、シェルは移動を担当できますが、意味を判断する部分はそのどちらにも属していません。
いまのMacの作業では、この判断の部分が3つ目の窓に移っています。フォルダとシェルに加えて、対話や自動処理を動かす窓が並んでいる状態です。ファイルの一覧は1つ目の窓に、移動の命令は2つ目の窓に、何をすべきかの判断は3つ目の窓にある。2画面のファイル管理アプリは1つ目と2つ目をつなぎますが、3つ目とはつながりません。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある形が意味を持つのは、この3つ目の窓を何度も往復している場合だけです。往復が1日に数回で済んでいるなら、2画面のファイル管理アプリで十分に足ります。
見分け方は簡単です。直近で、ファイルの作業に15分以上かかった場面を5つ思い出します。その時間が「たどる、コピーする、確認する」に消えていたなら、埋めるべき穴はファイル管理アプリの側です。「どれが何なのか、どこに置くべきかを考える」に消えていたなら、道具を速くしても同じ時間がかかります。
買う前にこの線を引いておくと、3か月後の満足度が変わります。繰り返し痛いのが移動と確認なら、2画面とシェルの区画がそれを消します。繰り返し痛いのが「そのフォルダに何が入っているのか誰も分かっていない」ことなら、中身の分からないファイルを速く動かせるようになっても解決しません。この線での違いは他のファイル管理との比較に、機能ごとの対応関係はできることに整理してあります。判断に迷う点はよくある質問も合わせて確認してください。
よくある質問
Commander Oneは無料で使い続けられますか?
無料の範囲で使い続けられます。2画面表示、タブ、3種類の表示形式、ショートカットの割り当て変更、正規表現検索、隠しファイルの表示、プレビュー、ZIPとRARと7-Zipの扱いが含まれます。含まれないのは、クラウド接続、FTP、端末のマウント、プロセスマネージャ、そして内蔵ターミナルです。
Mac App Store版とサイト版は何が違いますか?
Appleのサンドボックスの制限で、Mac App Store版では6つの機能が使えません。内蔵ターミナル、root権限での再起動、プロセスの終了、iOS端末のマウント、ローカルドライブの取り出し、F1〜F12のシステム設定の無視です。クラウド、FTPマネージャ、MTP、隠しファイルの表示はどちらでも使えます。
PRO Packはいくらで、サブスクリプションですか?
買い切りです。個人向けがMac 1台で29.99ドル、5台まで使えるチームライセンスが99.99ドルです。同じバージョン内の更新は無料で、大きなバージョンアップは割引価格になります。将来のバージョンをまとめて含む買い方も別に用意されています。
クラウドをつなぐと、ディスクの容量を使いますか?
Google DriveやDropbox、OneDrive、Amazon S3などはマウントの形でつながるため、移動のためだけにローカルへ複製は作られません。同期クライアントとは仕組みが違います。ただし大きなファイルや不安定な回線では挙動の差が出るので、試用期間中に実際のファイルで確かめておくと確実です。