Default Folder Xとは|何ができて、どこで詰まるか

Default Folder Xとは、macOSの「開く」と「保存」のダイアログに割り込んで、行き先のフォルダを選ぶ手数を減らす常駐型のユーティリティです。作っているのは米国の St. Clair Software で、公式サイトの著作権表記は1996年から続いています。最初に押さえておくと迷わないのは、これがFinderを置き換えるアプリではないという点です。普段使っているアプリの中に現れるファイルダイアログを、外から強くする道具です。現行版は6.3で、対応はmacOS 10.13から27まで。ここでは何ができて、どういう条件で効かなくなり、どこに手間が残るのかを順に並べます。

手を入れている場所は、アプリの中のダイアログ1枚

Finderの代わりになる道具は、自分の窓を持ちます。Default Folder Xは自分の窓を持ちません。Pages で書類を保存しようとしたとき、Safari でファイルを選ぼうとしたとき、Photoshop で書き出そうとしたときに出てくる、あの小さなダイアログの周りに帯を足します。だから使う側から見ると、アプリを切り替えても同じ操作が付いてくる形になります。

公式サイトは対象を次のように書いています。

Default Folder X enhances Open and Save dialogs in all of your applications 出典: stclairsoft.com

帯の中でできるのは、行き先の選択だけではありません。ダイアログを開いたまま、ファイルの情報を見る、複製する、名前を変える、捨てる。Finderに戻ってからやり直していた作業が、ダイアログの中で終わります。保存ダイアログのファイル名の入力欄が狭いという不満にも手を入れていて、欄そのものを広げます。半年前に付けた Q3EvntBdgt4Crissy のような名前を、省略されない形で読めるようにするためです。

中心にあるのは5つの動き

機能一覧は長いのですが、実際に日々効くのは5つに絞れます。

  • ナビゲーションアシスタント。最近使ったフォルダ、お気に入り、いま開いているフォルダを、ツールバーとメニューバーのアイコンから呼び出す。階層のポップアップメニューで、マウスを重ねるたびに下の階層が開く
  • クイック検索。Command+Shift+Space を押すと窓が出て、ファイル名やフォルダ名を数文字打つだけで絞り込める。アプリ名でも引ける
  • Finderクリック。保存したい先のフォルダがFinderで開いているなら、その窓をクリックするだけで保存先がそこに切り替わる。ダイアログの中を辿り直す必要がない
  • 記憶。直前に開いたファイルを選び直した状態で戻す。同じフォルダに保存し続けている場合は、そのフォルダを覚える
  • 既定フォルダ。アプリごとに最初に開くフォルダを決めておける

Finderの側でも動きます。Finderの窓の下に引き出しが出て、そこにファイルをドラッグしておけば後から取り出せます。メニューバーのアイコンにファイルをドラッグして、メニューからフォルダを選んで移動させることもできます。他社製のファイル管理アプリである Path Finder のツールバーにも、バージョン 5.5.7 以降は設定のチェックボックスだけでボタンが並びます。

権限を4つ求める。そのうち画面収録がいちばん驚かれる

導入したときに最初に引っかかるのがここです。Default Folder XはAccessibility、フルディスクアクセス、AppleEvents、そして画面収録の許可を求めます。ファイル管理の道具が画面収録を欲しがる理由は、公式のFAQに書かれています。ダイアログの中のメニューを実際に操作する必要がある場面で、メニューが画面に出てしまうのを隠すため、ダイアログのスクリーンショットを撮って一瞬だけ前に表示するという作りになっているためです。もう1つの用途は、ダイアログがダークモードで動いているかどうかの判定です。システムに問い合わせるAPIが用意されていないので、画像から判断しています。

The screenshot is only stored in RAM, never saved to a file, and is destroyed immediately after it is used. 出典: stclairsoft.com

どうしても渡したくない場合の逃げ道も公開されています。ターミナルで defaults write com.stclairsoft.DefaultFolderX5 launchWithoutScreenRecordingPermission 1 を実行すると、画面収録なしで起動できます。その代わり、メニューを操作する場面ではメニューと黄色い窓がそのまま見えることになります。ちなみにこの設定キーの名前が DefaultFolderX5 のままなのは、バージョン 6 でも内部の識別子を変えていないからです。設定ファイルの置き場所やサポート記事のコマンドを読むときに、この点を知っていると混乱しません。

効かないアプリには共通の条件がある

公式の説明では、macOSネイティブのアプリなら問題なく動きます。効かないのは、Windows と Linux も同時に相手にするための横断フレームワークで作られたアプリです。QT や Java がそれに当たり、フレームワークがmacOSのAccessibility APIを正しく実装していない場合に、Default Folder Xが持ち手を見つけられなくなります。名前が挙がっているのは電子書籍管理の Calibre で、動く人もいれば固まる人もいる、と書かれています。

標準のmacOSファイルダイアログを使わないネイティブでないJavaアプリも、対象外です。もしアプリが起動しなくなった場合の対処は決まっていて、メニューバーのアイコンから設定を開き、Options タブのリストの下にある「+」ボタンでそのアプリを除外リストに入れます。除外したアプリの中ではDefault Folder Xが動かなくなるので、副作用ではなく取引です。

版とOSの対応。古いMacにも道が残されている

どの版を入れればよいかは公式のFAQに一覧があります。

macOSのバージョン 入れる版
27 Golden Gate から 10.13 High Sierra 6.3
13 Ventura から 10.13 High Sierra 5.7.8 も使える
10.12 Sierra と 10.11 El Capitan 5.6.6
10.10 Yosemite から 10.6 Snow Leopard 4.7.4
10.5 と PowerPC 4.5.12
10.4 Tiger 4.3.10

公式が正式に支援しているのは 6.3 だけで、それより前の版は古いmacOSの上では動く、という書き方に留めています。Apple SiliconとIntelの両対応は 5.5 以降です。2010年代前半のMacを現役で使っている環境でも、入れられる版が残っているという点は、この種のユーティリティとしては珍しい部類です。

費用は30日試したあとの買い切り

試用は30日で、機能の制限はありません。その後は1人用のライセンスが39.95ドル、2本以上まとめて買う場合は1本34.95ドルです。教育機関向けの割引枠も用意されています。数え方は台数ではなく人単位で、本人が唯一の利用者である限り複数のMacに入れてよい、と公式のFAQに明記されています。

バージョン6への更新は、以前のライセンスをいつ買ったかで金額が変わります。2023年3月1日以降の購入なら無料、2022年9月1日から2023年3月1日までなら9.95ドル、それより前なら19.95ドルです。購読ではなく一度の支払いで、次のメジャー版が出るまでの更新が付きます。公式はその間隔を5年から7年程度と書いています。

古いライセンス番号を紛失した場合の照会フォームも公式に用意されています。何年か前に買った記憶がある場合は、新しく買う前にそちらを当たる順番になります。更新が無料に当たるかどうかは、バージョン6の設定のGeneralタブに古い番号を入れると判定してくれる作りです。窓口のメールアドレスも公開されているので、判定が出ない場合はそこから照会できます。

詰まるのは、ダイアログが速くなったあと

ここまでが道具の輪郭です。では何が解決しないのか。Default Folder Xが短くしているのは「ダイアログを開いてから行き先を決めるまで」の時間です。その手前と後ろは変わりません。

ターミナルでコマンドを打ち、生成物をフォルダで確かめ、AIに次の指示を出す。この往復を1日に何十回もしている人の手が止まっているのは、ダイアログの中ではなく窓と窓のあいだです。ファイル管理アプリの窓、ターミナルの窓、AIとやり取りする窓。3枚を並べれば1枚あたりの幅が潰れ、重ねれば切り替えるたびに「さっきどこを見ていたか」を思い出し直すことになります。ダイアログの操作が3秒速くなっても、この思い出し直しの回数は1回も減りません。

もう1つ残るのが、Mac の前を離れたあとです。AIのエージェントに作業を任せると、5分から30分ほど動き続けます。その途中で確認を求めて止まったとき、席にいなければ何も進みません。ダイアログを速くする設計は、この待ち時間に対して打つ手を持っていません。

道具を選ぶ軸を、機能の数から窓の数に置き換える

Default Folder Xの機能一覧を読んで判断しようとすると、決め手が出にくくなります。どの項目も便利で、否定する理由が見つからないからです。判断の軸を変えたほうが早く、数えるのは機能の数ではなく、1日のうちにフォルダとターミナルとAIのあいだを何回移ったかという回数です。

回数が少ない人は、ダイアログを強くする道具が正しい選択になります。回数が多い人は、ダイアログを強くしても効きません。窓を移らずに済む形が要ります。どの操作が1枚の画面の中で完結するのかを並べたできることを先に読むと、自分がどちら側かの判断が付きます。ファイル管理アプリごとの得意分野を横並びにした他のファイル管理との比較は、比べる軸そのものを整える材料になります。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある形を基準に置くと、比較の問いは「ダイアログが速いか」ではなく「窓を移る必要があるか」に変わります。

離席の問題については、手元の端末から母艦のMacの続きを触れるかどうかが分かれ目です。エージェントが止まって待っている状態に、電車の中から答えられるかを説明したiPhone・iPadから続きをを見ておくと、必要な機能の一覧が変わります。費用の考え方を並べて比べたい場合は料金、条件の細部を確かめたい場合はよくある質問に整理があります。

Default Folder Xとは何かという問いに一文で答えるなら、macOSのファイルダイアログを速くする買い切りのユーティリティです。30年にわたって続いている道具で、対応OSの幅も更新の履歴も揃っています。足りるかどうかは、機能の善し悪しではなく、自分の1日が窓の中で終わっているか、窓のあいだで終わっているかで決まります。

よくある質問

Default Folder XはFinderの代わりになりますか?

なりません。自分の窓を持たず、各アプリの「開く」と「保存」のダイアログに帯を足す作りです。Finderのツールバーにボタンを並べたり、窓の下に引き出しを出したりはできますが、ファイル一覧を表示する主画面はFinderのままです。2画面のファイル管理アプリを探している場合は、別の種類の道具を見ることになります。

画面収録の許可を出さないと使えませんか?

出さなくても起動する方法が公式に公開されています。ターミナルで launchWithoutScreenRecordingPermission の設定を1にすると、許可なしで動きます。その場合、ダイアログの中のメニューを操作する場面でメニューや黄色い窓が見えるようになります。撮った画像はRAM上だけで保持され、ファイルには保存されないと公式が説明しています。

費用はいくらで、購読ですか?

購読ではありません。30日の試用のあと、1人用のライセンスが39.95ドル、2本以上まとめて買う場合は1本34.95ドルです。バージョン6への更新は、以前の購入日が2023年3月1日以降なら無料、2022年9月1日以降なら9.95ドル、それより前なら19.95ドルです。一度の支払いで、次のメジャー版が出るまでの更新が付きます。

どのアプリでも効きますか?

macOSネイティブのアプリなら公式は問題ないとしています。効かないのは、QTやJavaのような横断フレームワークで作られ、macOSのAccessibility APIを正しく実装していないアプリです。電子書籍管理のCalibreが例として挙げられており、環境によって固まる場合があります。そうしたアプリは設定のOptionsタブから除外リストに入れて回避します。

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