書類の命名規則の費用|無料でできる範囲
書類の命名規則を決めること自体に費用はかかりません。お金が関わり始めるのは、決めた規則を大量のファイルに当てる段階です。標準の道具で1つ目のフォルダは片付いたのに2つ目で行き詰まり、有料アプリの候補が並んだところで選ぶ基準が無い、という状態でこの言葉を検索している人が多くいます。ここでは、どれを買うべきかではなく、標準の道具がどこで止まるのか、その線の向こう側で各社がいくらと書いているのか、そして手元の作業がどちら側にあるのかを見分ける形で整理します。
macOSに最初から入っているもの
費用ゼロで使える道具は4つあり、合わせて考えると、この質問を持つ人が想定しているより広い範囲を覆います。
Finderの名称変更は、複数のファイルを選んでショートカットメニューから呼び出します。Appleの説明では3つの方式が挙げられていて、見落とされやすいのが3つ目です。
ポップアップメニューで「テキストを追加」を選択し、追加するテキストをフィールドに入力してから、テキストを現在の名前の前に追加するのか、あとに追加するのかを選択します。
置き換え、追加に加えて、フォーマットではインデックスやカウンタや日付を組み合わせて名前を作り直せます。件数の上限は事実上無く、費用もかかりません。
ショートカットには「ファイル名を変更」の動作があり、日付や文字列の動作と組み合わせると、決まった形を当てるだけでなく、条件で分ける処理も書けます。クイックアクションとして保存すればFinderのメニューに並びます。Automatorはそれより古い仕組みですが今も入っていて、フォルダアクションとして保存すると、指定したフォルダにファイルが届いたときに動きます。
ターミナルの側では、標準のzshにzmvという道具が含まれています。autoload -U zmv で読み込み、パターンで拾って書き換えます。-n を付けると実際には動かさず、何をするつもりかだけを一覧で出すので、数百件に当てる前の試運転として使えます。
標準の道具が止まる線
線の位置は、扱う件数ではありません。件数が多いだけなら標準の道具で足ります。止まるのは3つの場面です。
1つ目は条件分けです。Finderの名称変更は、選んだ項目すべてに同じ変換を当てます。請求書は片方の形、納品書はもう片方の形、といった分け方はできないので、混ざったフォルダでは選び直して2回実行することになります。ショートカットやzmvなら条件は書けますが、その論理を自分で組み立てる時間がかかります。
2つ目は、ファイルの中身を読むことです。標準の道具はどれも、中身から名前を作れません。スキャンした請求書に印字されている取引先の名前でリネームする、という処理はパターンでは表せず、紙面を読む仕組みが要ります。有料の道具が売っている範囲で、いちばん大きいのがここです。
3つ目は、頼まなくても動き続けることです。Finderの名称変更は実行したときだけ動きます。Automatorのフォルダアクションはフォルダを見張れますが、数が増えると保守そのものが作業になります。何か月も届き続けるファイルに同じ規則を当て続ける用途は、標準の道具の得意な形から外れます。
4つ目として、実行前の下見も挙がります。数百件に少しずれたパターンを当てると、戻すのは大仕事です。Finderの名称変更には結果の一覧が出ませんが、zmvの -n は文字の形で同じ役目を果たします。下見が効くのは、ずれに気づくためだけではありません。大文字小文字だけが違う名前に当たっていないかも、実行前の一覧なら目視で拾えます。標準の起動ボリュームは大文字と小文字を区別しないため、同じ名前とみなされた側は確認なしに上書きされ、ゴミ箱にも残りません。
もう1つ、標準の道具でも作業量を大きく減らせる場面があることは押さえておく価値があります。過去分の名前が完全にばらばらに見えても、実際には出どころごとに数種類の形に収まっていることがほとんどです。出どころで分けてから、形ごとにパターンを1つずつ当てれば、条件分けができない道具でも、実行の回数を数回に抑えられます。有料の道具が短縮するのは、この「分けて、当てて、確かめる」の回数であって、できないことをできるようにする部分は、中身を読む処理に限られます。
800件のスキャンで線がどこに来るか
スキャナの連番のまま溜まった800件を、日付と取引先の形に直す場合を考えると、この線は2つに割れます。決まった接頭辞を付けて連番の桁を揃えるところまでは、Finderの名称変更の1回の実行で終わり、所要は数十秒です。各ファイルに正しい取引先の名前を入れる部分は、どんなパターンでも表せません。その情報は紙面にしか無いからです。人が1件ずつ読むか、紙面の文字を読む道具に任せるかの二択になり、そこが無料と有料の境目です。買い物に出る前にこの2つを分けておくと、買う必要がある範囲は件数の上ではむしろ小さいほうだと分かります。
有料の道具が書いている値段
以下は各社のページに出ている、個人が1人で使う場合の金額です。
| 道具 | 価格 | 形態 | ページに書かれている条件 |
|---|---|---|---|
| Finderの名称変更、ショートカット、Automator、zsh | 無料 | macOSに同梱 | パターンでの変更。中身は読まない |
| Name Mangler 3.9.3 | 19ドル | 買い切り、アップグレード9ドル | ライセンスは永続、macOS 10.13以降、試用あり |
| A Better Finder Rename 12.34 | 29.95ドル | 買い切り | macOS 13以降。10.15から15は12.14が対応。30日間の返金保証 |
| Hazel 6 | 42ドル | 買い切り、アップグレード20ドル | フォルダを見張り、属性に応じて名前の変更や振り分けを行う |
並べると2つのことが見えます。どれも月額ではなく買い切りで、Mac向けの実用ソフトとしては今では珍しい形です。そしてもう1つ、価格が上がる方向は機能の多さではなく、こちらが見ていない間も動き続けるかどうかに沿っています。19ドルと29.95ドルの2つは、開いて使って閉じる道具です。42ドルが付いているのは、動き続ける側の道具です。
買う前に見ておく行がもう1つあります。対応するmacOSの版です。上の表のうち1つは、新しいmacOS向けと古いmacOS向けで別の版を用意しています。買い切りの金額は、対応が止まる時期によって実質の単価が変わるため、各社のページに書かれている対応の行を先に読むと、数年使える買い物か、次の大型更新までの買い物かが分かります。
1回きりの作業か、続く作業か
選ぶ作業は、手元の仕事をこの2つに正直に分けた時点でほとんど終わります。
1回きりの作業とは、溜まった過去分です。何年かかけてばらばらの名前が付いた数千件を、一度だけ形に揃えて、あとは放っておく。標準の道具で足り、手間はパターンを考えるところに集中します。過去分の中に別々の形が何種類も混ざっている場合は、結果を先に見られる専用の道具があると作業時間が縮みます。上の表にある2つの道具はその用途のものです。
続く作業とは、流れです。スキャナ、カメラ、取得のフォルダ、共有ディスクから毎週届き、そのたびに同じ処理が要る。ここで費用になっているのはリネームの手間ではなく、やるのを覚えている手間です。見張って動く仕組みが値段に見合うのはこの場合で、放っておくと、忙しい月に飛ばされて新しい過去分が積み上がります。
取り違えは両方向で起きます。過去分のために見張る仕組みを買うと、使わない継続性にお金を払うことになります。流れを手作業でさばくと、規則は静かに守られなくなり、あとから見た人は、どのファイルが処理済みなのか判別できません。
どちらにも当てはまらない3つ目の形もあり、こちらは台数の勘定が絡むので分けて考えます。2台のMacで共有しているフォルダや、2人で使っているフォルダでは、どちらの側から届いたファイルにも同じ規則が当たっている必要があります。1台ごとに費用がかかる形のライセンスなら、1本の買い物が2本になります。片方でしか動いていない状態は、届いたファイルの半分だけが処理された状態と同じで、月をまたいで飛ばしたときと同じ結果になります。上の表の道具のうち少なくとも1つは、個人1人ぶんの価格とは別に、まとめて使う場合のライセンスをページに載せています。共有しているフォルダが対象なら、表の金額より先に読むべき行はそちらです。
払う価値を自分の数字で出す
比べるのは固定の金額と、繰り返しかかる分数です。数えれば5分で出ます。
直近1か月で実際に行ったリネームの回数を数えます。1件ずつ直したものも、リネームだと意識していなかったぶんも入れます。それに1回あたりの所要時間を掛けます。フォルダを探す時間と結果を見直す時間も正直に含めます。出た分数が1か月あたりの費用です。数え始めると、回数そのものより、1回あたりが長引いていることのほうに気づく場合が多くあります。29.95ドルの道具は、その答えが1時間なら短い期間で元が取れ、10分なら取れません。
もう1つ、数え落とされやすい費用があります。リネームは1つの窓では終わりません。フォルダは片方にあり、確認はもう片方にあるので、1回のたびにファイルの一覧と、コマンドか下見の欄との間を往復します。リネームの回数ではなく切り替えの回数を数えると、答えが変わることがあります。5秒の作業が2分になる原因は、この往復のほうにあるためです。
お金では解決しない部分
上の表のどの金額を払っても、多くの命名規則が守られない理由そのものは変わりません。ファイル名の大半は人が打っていないからです。取得したファイルはサーバーが付けた名前、スキャナは自前の連番、画面の保存はシステムの日時の書式を持って届きます。リネームの道具は、届いたあとに規則を当てる道具です。名前の付いていないファイルが届くのを止めるものではなく、規則の中身を決めてくれるものでもありません。
つまり、無料の部分がいちばん弱い部分というわけではありません。どの項目を、どの順番で、何桁で入れるかを決める作業が、そのフォルダが使えるかどうかを決めています。費用は注意力だけです。ソフトにお金を払う価値が出るのは、その決定が済んだあとで、残った問題が「手作業では多すぎる件数に当てること」になってからです。
窓の数を先に減らすという選び方
有料の道具を見る前に、1回のリネームに何回窓を移っているかを数えてみると、金額の比較とは別の選択肢が見えます。一覧を見る場所とコマンドを打つ場所が分かれている限り、どの道具を買っても往復は残るためです。
フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある形のファイル管理は、この往復のぶんだけを取り除きます。中身を読んで名前を付ける処理や、見張って動く処理とは解いている問題が違うので、上の表と同じ軸では比べられません。どこまでを1つの窓で扱えるかはできることに、他の道具との役割の違いは他のファイル管理との比較にまとまっています。金額そのものを並べて見たい場合は料金が該当し、買う前に出やすい疑問はよくある質問に集めてあります。
よくある質問
Macで複数のファイルの名前を一度に変えるのに、お金はかかる?
かかりません。Finderで複数のファイルを選んでショートカットメニューから名称変更を選ぶと、置き換え、追加、フォーマットの3つの方式が使えます。フォーマットではインデックスやカウンタや日付を組み合わせられます。ショートカット、Automator、zshのzmvも同梱です。
有料のリネーム用アプリはいくらぐらい?
各社のページには、Name Mangler が19ドル、A Better Finder Rename が29.95ドル、Hazel が42ドルと出ています。いずれも月額ではなく買い切りで、Name Mangler と Hazel には9ドルと20ドルのアップグレード価格も示されています。
有料の道具でないとできないことは?
主に3つです。1回の処理でファイルごとに違う規則を当てること、書類の中身に印字されている文字から名前を作ること、あとから届くファイルに同じ規則を当て続けることです。実行前に結果の一覧を見られる点も、件数が多いほど効いてきます。
毎週ファイルが届くフォルダには、見張って動く仕組みを入れるべき?
その用途のために作られた仕組みなので、検討する価値があります。繰り返しかかっている費用が、リネームそのものではなく「やるのを覚えている手間」になっているためです。過去分を一度だけ片付けたいだけなら、同じ金額で使わない継続性を買うことになります。