Path FinderはFinderの代わりになるか|年額を払う前に数える数字

Path FinderをFinderの代わりに使えないか、と調べ始める日はだいたい決まっています。4,000個のファイルが入ったフォルダを開いたまま、ネットワークボリュームへコピーを流し、パスを貼り付けるためにターミナルの窓を前に出した日です。Path FinderはMac向けのファイル管理アプリとして2001年から続いていて、この場面で最初に名前が挙がります。ただ、判断に必要なのは「良いか悪いか」ではありません。いまの作業のどこを置き換えて、どこはそのまま残るのかです。

Finderの代わりを探す人が、実際に詰まっている場所

Finderに不満を持つ理由は人によって違うように見えて、集約すると3つに収まります。

1つ目は、2か所を同時に見られないことです。移動元と移動先を1つの窓で並べられないので、窓を2枚並べるか、開いては戻るかを繰り返します。件数が増えるほど、確認の往復が増えます。

2つ目は、移動の前に一時的にためておく場所がないことです。複数のフォルダから少しずつ集めて最後にまとめて移す、という手順を素直に取れません。デスクトップや適当な新規フォルダが仮置き場になり、その仮置き場が残ります。

3つ目は、パスの扱いです。Finderで選んだフォルダをターミナルで開き直す作業は、コピーして貼って、居場所が合っているかを確認するところまでが1セットです。1日に何度も出てきます。

この3つは道具で解けます。一方で、「どのファイルが何なのか分からない」「名前の付け方が決まっていない」という詰まりは、道具の乗り換えでは解けません。最初にどちらの詰まりなのかを分けておかないと、判断を間違えます。

Path FinderがFinderの手前で埋めている穴

Path FinderはCocoatechが出している独立したアプリで、Finderの拡張ではありません。日常のファイル操作をこちらに寄せることはできますが、デスクトップの描画や一部のシステムのダイアログはmacOSがFinderを使うため、Finder自体は裏で動き続けます。

実際に効く機能は名前を挙げられます。2画面表示、集めたファイルを一時的に置くDrop Stack、隠しファイルの表示切り替え、Finderの情報ウインドウでは触れないアクセス権(ACL)の編集、フォルダの比較と同期、16進エディタ、そして窓の中で開く内蔵ターミナルです。最新のPath Finder 26では、2つのフォルダを比較する操作と、選んだフォルダの中の重複ファイルを見つける機能が加わりました。対応言語は20言語です。

注意しておきたいのは、Path Finderが先に持っていた機能の一部を、後からFinderが取り込んでいることです。タブ表示やフォルダの並び順の細かい指定がそれにあたります。つまり2012年ごろに比べると、両者の差は縮んでいます。いま残っている差は、2か所を同時に見ること、移す前にためること、コマンドを打たずに権限をいじること、この3点に寄っています。

画面の構成は自由度が高く、パネルを窓の左右に「シェルフ」として貼り付けて並べ替えられます。Path Finder 26ではこのシェルフが縦一杯の形に作り直されました。この自由度が長く使い続ける理由になる人もいれば、最初の1時間で離れる理由になる人もいます。並べ方を20通りに変えられる道具は、並べ方を決める作業を利用者に渡してくるからです。

2画面とDrop Stackが、実際に減らす手数

機能名だけでは効き目が分かりにくいので、手順に置き換えて数えます。

たとえば、案件ごとに散らばった納品用のファイルを1つのフォルダに集める作業を考えます。Finderだけでやる場合、窓を2枚並べて位置を調整し、片方でフォルダをたどり、見つけたファイルをもう片方へドラッグし、次の案件フォルダへ移動するために窓を戻す、という往復になります。ドラッグの途中で下の窓が別のフォルダに変わっていて、意図しない場所に落ちる事故もここで起きます。

2画面表示は、この「窓を並べて位置を調整する」部分を消します。左右の区画は固定なので、ドラッグの落とし先が動きません。Drop Stackはさらに前段を消します。集めたいファイルを見つけた順に放り込んでおき、行き先が決まってからまとめて出せるので、移動先を先に決めておく必要がなくなります。集める作業と、置き場所を決める作業を分けられる、と言い換えてもいいです。

削れる手数は1回あたり数秒ですが、効くのは時間より事故の減り方です。移動先を間違えたファイルを探し直す時間は数秒では済みません。乗り換えを検討するときは、速くなった感覚ではなく、手でやっていた手順がいくつ消えたかで見ます。消えた手順は残りますが、新しい画面の心地よさは10日ほどで薄れるからです。

ライセンスの形が変わった。年額と期間ライセンスの差

機能よりも動きが大きかったのがここです。Path Finderは長く買い切りのアプリでしたが、いったんサブスクリプションのみに移行し、その反発を受けて2022年10月に期間ライセンスを復活させました。開発元は理由をはっきり書いています。

Our new payment processor is a great solution for subscriptions, but it did not handle traditional license keys. 出典: cocoatech.io

現在の認証はライセンスキーの入力ではなく、メールアドレスでのサインインです。そして期間ライセンスが切れたあとの挙動が独特で、切れた日より前に公開された最新版はそのまま動き続け、それより先へアップグレードするには買い直しになります。買い切りが切れた状態とも、サブスクを解約した状態とも違うので、期間を選ぶ前に確認しておく価値があります。

買い方 価格 期間が終わったとき
年額サブスクリプション 29.95ドル(自動更新) 解約しない限り継続
期間ライセンス 1年 32.95ドル その期間内の最新版が動き続ける
期間ライセンス 2年 55.95ドル 同上(2年分)
期間ライセンス 5年 122.95ドル 同上(5年分)
Setapp 月額14.99ドルから(多数のアプリ込み) 会員をやめた時点で使えなくなる

Path Finder 26は有料アップグレードですが、公開より1年以内にライセンスを買っていれば追加の支払いなしで使えます。見落とされやすいのがSetappの経路です。これは束売りなので、比べる相手は年32.95ドルではなく、束の中で実際に使う他のアプリの価値になります。他に使うものが無いなら、直接ライセンスを買うほうが安く済みます。料金の考え方そのものを他社と並べて見たい場合は、料金に一覧の形でまとめてあります。

内蔵ターミナルは、窓の往復をどこまで減らすか

内蔵ターミナルは、期待と実力がずれやすい機能です。実際にやってくれるのは、いま選んでいるフォルダの位置でシェルの区画を開くことです。ファイル管理側からパスをコピーして、別のターミナルアプリに貼り、正しい場所に居るかを確認する。この一連の手間が消えます。ここは確実に効きます。

一方で、そこから先は変わりません。シェルの区画はシェルです。コマンドを知っていて、打てて、覚えている必要があります。普段からターミナルで作業している人にとっては、自分の設定で整えたターミナルアプリのほうが快適なので、節約できるのはパスの受け渡しだけです。逆に普段ターミナルを使わない人にとっては、区画があってもコマンドが書けるようにはならないので、便利そうに見えて2回で使わなくなります。

判断のしかたは数えることです。1週間、ファイルの窓からターミナルの窓へパスを渡した回数を数えます。10回を超えるなら、この区画は注意力の節約として元が取れます。2回なら、支払っているのは2画面表示とDrop Stackに対してであり、ターミナルは判断材料に入れないほうが正確です。

置き換えても直らないこと

Finderの代わりを探しに来た不満のうち、いくつかはFinderの外側にあります。ファイル管理アプリを替えても残ります。

iCloud Driveの「ストレージを最適化」が有効なファイルは、一覧に見えていてもディスク上に無いことがあります。開いた瞬間にダウンロードが走る待ち時間は、iCloud側の挙動なので乗り換えても消えません。遅いネットワークボリューム、プレビュー生成に時間がかかる大きな動画のフォルダ、通常のファイルとして中身を見せない写真ライブラリも同じです。

検索の速さも同じ性質を持っています。ファイル管理アプリの検索窓は、多くの場合macOSのSpotlightの索引を読んでいるだけです。索引が作られていない外付けドライブや、索引から除外する設定にしてあるフォルダは、どのアプリから探しても遅いままです。「検索が遅いから乗り換える」と決める前に、システム設定でその場所が索引の対象外になっていないかを確認したほうが早く終わります。

もう1つが、名前とタグの決めごとです。タグ運用が続かないのは、タグの機能が弱いからではなく、どのタグが何を意味するかを決めていないからです。Path FinderのタグやラベルはFinderより細かく扱えますが、規則が無い状態で扱える幅を広げると、散らかり方が複雑になるだけです。先に規則を決めて、その規則を守るのが楽になる道具を選ぶ、という順番のほうが確実です。ファイル管理アプリごとに何ができて何ができないかは他のファイル管理との比較に、機能の粒度ごとの違いはできることにまとめてあります。

乗り換える前の1週間で数える数字

体験版の期間は短く、期間ライセンスは1年から5年です。この2つの時間の長さが噛み合っていないので、短い試用期間に長い判断を背負わせることになります。だから試用は「探検」ではなく「予行演習」として使います。

数えるのは3つです。1つ目は、ファイルの窓からターミナルの窓へパスを渡した回数。2つ目は、移動元と移動先を確認するために窓を切り替えた回数。3つ目は、ファイルを動かす時間ではなく、そのファイルが何なのかを判断していた時間です。

前の2つが大きいなら、埋めるべき穴はファイル管理アプリの側にあります。3つ目が大きいなら、話が変わります。フォルダとシェルは場所を扱う道具で、中身の意味を扱う道具ではないからです。フォルダとターミナルとAIが同じ窓にある形が効くのは、この3つ目が大きいときだけです。300枚のスクリーンショットを日付と内容で名前を付け直す作業を思い浮かべると分かりやすい。フォルダは置き場を、シェルは移動を担当できますが、どれを何と呼ぶかを決める部分は、そのどちらでもありません。

試用の初日には、移り住むための時間を1時間だけ確保しておきます。キーボードショートカットが違うこと、サイドバーのお気に入りをアプリごとに作り直すこと、他のアプリからの「Finderで表示」が元のアプリを開く場面が残ること。これらは初日にまとめて出てくる摩擦で、道具そのものの良し悪しとは別物です。ここを分けておかないと、慣れていないだけの不便さを評価だと勘違いして、2日目でやめてしまいます。判断に迷いやすい点はよくある質問にも整理してあります。

よくある質問

Path Finderを入れると、Finderは使わなくなりますか?

両方動きます。macOSはデスクトップの描画や一部のシステム機能でFinderを使うため、Finderを止めることはできません。できるのは、日常のファイル操作をPath Finder側に寄せることです。ファイルシステム自体は共通なので、後で外しても中身は元のままです。

買い切りのライセンスはもうありませんか?

永続ライセンスはありません。自動更新の年額サブスクリプションが29.95ドル、期間ライセンスが1年32.95ドル、2年55.95ドル、5年122.95ドルという構成です。期間が終わっても、その期間内に公開された最新版はそのまま動き続けます。それより新しい版に上げるには買い直しになります。

内蔵ターミナルは普通のターミナルと同じものですか?

いま選んでいるフォルダの位置でシェルの区画が開く仕組みで、コマンドの動きは通常と同じです。省けるのはパスをアプリ間で受け渡す手順です。自分好みに設定したターミナルアプリを既に持っている人にとって、その置き換えにはなりません。

Setapp経由と直接購入では、中身は違いますか?

アプリとしては同じものが使えます。違うのは支払いの形と、束の中の他のアプリを使うかどうかです。Setappは月額14.99ドルからで多数のアプリが含まれるため、他に使うものが無ければ直接ライセンスのほうが1年あたりでは安く済みます。会員をやめると使えなくなる点も判断材料になります。

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